私たちは、社員の車に先導されて体感ハウスへ向かった。そこは事務所から車で10分ほどのところなのだが、表通りから五〇〇メートルほど奥まった住宅地の中にあった。玄関ドアを開けて一歩中に入った瞬間から、一月だというのにまるで小春日和のようにほんわりとした暖かさに包まれた。その暖かさは、かつてまったく体感したことがないものだった。あの瞬間に感じたホワーツとしたなんとも言えない暖かさを、今でも鮮明に思い出すことができる。「わあ、暖かいですね」私は、素直に驚いた。住宅展示場で常に気になる臭いもなく、空気がきれいで優しく感じられた。二階から小屋裏へと上がっていくのだが、暖かさが少しも変わりなく感じられた。普通は暖房をしているのだから、上に行くほど温度が上がるはずだ。その心地良い暖かさは、「クレタ」という深夜電力を使う幅財暖房機が演出していた。近寄ってもあまり暖かく感じない、温風も出さない、およそ暖房機というイメージからはかけ離れたものだった。その時に暖房していたのは三台設置されている内の一台だけであったことに、私と母はすっかり驚かされてしまった。あちこちに用意されているデジタル温度計の数値は、どれも二〇〜二一度の範囲にあって、玄関と小屋裏とでは〇・六度後者のほうが低かった。「何なんだろう、この家は!今までのどの家とも違うぞ!」私と母は、ごく自然な感じで上着を脱いだ。冬に家を見学していて上着を脱ぐなどということは、これまでにまったく経験しなかったことだ。それも暑く感じたからではなく、脱ぐのが自然だと感じたからだ。この家なら、半袖でも過せそうだ。私がそれまでに体験してきた家は、暖房していることを常に意識させられる暖かさだったから、いったん体が温まって、その環境に慣れてしまうと不快に感じるようになる。熱源が暖気を吹き出すものや床暖房などがその典型だ。
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