ドア形式じゃなくて引き戸形式で、スッスーじゃ、なんか間が抜けて様にならない。運命の転回を告げるにふさわしい重厚さに欠けるというか、盛りあがりに欠けるというか。忠臣蔵の浪士たちが討ち入りに行ったら、雪夜に静まりかえる吉良邸の門が引き戸なんぞじゃ、大高源吾がなんのために重い大槌をかついで列に遅れないよう息を切らせて走ってきたのか分からなくなる。ヨーロッパにも引き戸があることは意外に知られていない。さすがに家の出入口にはないが、家の中の部屋と部屋の間の仕切りに例がある。
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具体的にいうと食堂と居間の間の仕切りが、両側に引き分けられ、壁の中に引き込まれるようになっている。日本における門扉のドア形式ほど一般的ではないが、向こうの人も引き戸の形式について全く知らなかったわけではないのである。どうして向こうでは引き戸は家の中のごく一部分にしか使われず、一方、日本では引き戸が中心となったのか。この答えは、日本における引き戸とドア形式の使い分けのなかにある。ドア形式の扉は、お城の城門とかお屋敷の門とか、敵や浪士に攻められて似合いそうな所にばかり使われていることから知られるように、防衛を強く意識した装置にほかならない。大高源吾の大槌で叩かれても破られないように工夫されたのがドア形式なのである。そんな心配のないところは引き戸ですます。普通の家なら出入口も引き戸、部屋と外をつなぐ開口部も引き戸形式の障子やガラス戸や雨戸。日本の人々は、適材適所をこころえ、ドア形式と引き戸形式を使い分けて来たのだった。